悲しいニュースが多い

ちょっと古いけど、若桑みどりさんが亡くなられたのはかなりショックでありました。あの人の切れ味の良い文体が大好きでした。ハンニバル・レクター絡みで『フィレンツェ』を読んで以来、『イメージを読む』『薔薇のイコノロジー』『お姫様とジェンダー』な…

ジェフリー・フォード『記憶の書』

読了。 山尾悠子さんが翻訳に参加して話題となった『白い果実』の続編。三部作の二作目にあたります。 『理想形態市』崩壊から8年後の設定。観相官を辞めてウィナウの村で薬草取ったり子供取り上げたりしながら慎ましくも穏やかに暮らしていたクレイ。そこ…

伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』

GWはひたすら家の掃除に明け暮れていました。当然旅行など行きません、どころか駅前の商店街すら出ていない有様。「東名高速下り大和トンネル付近で渋滞40km」なんてニュースがどこか遠い国の出来事のよう。 おかげで楽しみは読書とDVDばかり。 先日チャ…

『紙の空から』スティーブン・ミルハウザー他、柴田元幸編訳・『空中スキップ』ジュディ・バドニッツ、岸本佐知子訳

聞き比べ、ときたら次は読み比べの話ですよね。 「星の王子様」しかり「ライ麦畑」しかり、最近は色んな訳者が同じ本を翻訳することが多くなりました。 原語が分からない、でも海外文学は読みたい読者としては、読み比べができることは嬉しいかぎりです。翻…

贈る物語 Wonder Terror Mystery

瀬名秀明編の「Wonder」はハードカバーで持っていたんだけど、宮部みゆきの「Terror」と綾辻行人の「Mystery」は既読の作品も多く、購入をためらってたんですが文庫落ちしたのをきっかけに全部そろえてみました。 SF、ホラー、ミステリという編者それぞれの…

パトリック・ジュースキント『香水』

映画化されたと聞いてどびっくり。映像で見てみたいとは思っていたけど、果たしてどんな作品になったんだろう。ものが「香水」だけに映像で表現するのは相当難しそうなんですが。 トム・ティクヴァって「ラン・ローラ・ラン」の監督かあ。あの映画と「香水」…

『バーナム博物館』スティーブン・ミルハウザー

言葉で世界を構築できる数少ない作家、ミルハウザーの『幻影師、アイゼンハイム』が『The Illusionist』というタイトルで映画になるようです。主演はエドワード・ノートン。ちょっとシネマランキングの映像を見たところ、原作とはかなり違う感じ…原作は30…

『民族浄化』を裁く―旧ユーゴ戦犯法廷の現場から―:多谷千香子著

米澤穂信の『さよなら妖精』のネット上の評判がかなり良いようですね。ユーゴスラヴィアが関係する話と聞いて、少し気になってるんですが今はまだ読まないつもり。 で、米澤穂信とは全く関係なくちょうどユーゴ関連の本を読んだので、もし『さよなら妖精』で…

鮎川哲也・島田荘司編「奇想の復活―ミステリーの愉しみ」

新本格のアンソロジー。このうち竹本健治『メニエル氏病』、麻耶雄嵩『遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる』は既読。 厚くて重くて(だって900ページもあるのです)病人には不向き。それに病み上がりで気合入れて本格読もうって気にはならないし、選択ミスだっ…

血―吸血鬼をめぐる8つの物語 

GWは結局おうちで本ばっかり読んでました。うち一冊についてレビュー。 内容はタイトルどおり吸血鬼を題材としたアンソロジー。全体としての感想はうーん…買わなくて良かった。かなりいまひとつ感漂う内容。うちいくつかをピックアップして感想など。 大原ま…

滝本竜彦『NHKへようこそ!』

一応流行りモノ(ってもう古いけど)には手を出しておこうかなと思い読んでみる。 何でしょう、このどこかで見たようなフレーズが多いのは気のせいなんでしょうか。まるでコードの縛りがあるかのように文章に個性が感じられない。それともライトノベルってこ…

地球の静止する日

今月もなんだかんだと忙しかった……。マメな更新を意識しないと続けていけないかも、不安。 本読んだり音楽聴いたりとかはやってるんですけどね。 本の話。 映画の原作となったSF小説のアンソロジー。観たことのある(というか知ってる)映画は「ミミック」…

『人格転移の殺人』 西澤保彦

「七つの黒い夢」で気になったので早速読んでみた西澤保彦。人格が入れ替わる装置に偶然入ってしまった6人。人格がくるくると入れ替わるなかで殺人が起きるという頭がくらくらするような設定。果たして犯人は誰か? また何のために? 通勤時間が読書タイム…

乙一ほか『七つの黒い夢』

乙一目当てで買っただけなので、まあそれほどがっかりでもなかったんですが。400円だし。 とはいえ全体のクオリティは正直なところ期待はずれ。面白かったのは乙一と北村薫、西澤保彦くらいでした。 乙一『この子の絵は未完成』 「黒い夢」というタイトル…

横光利一 『日輪 春は馬車に乗って他八編』

最近横光利一がマイブーム。相方に『蝿』を勧められて以来この人の描写の確かさと文章の巧さにはまっています。戦前から戦後の作家で、こんなに映像的(というか映画的というか)な文章を書く人がいたんだなあ。 個人的には『機械』にやられた。この手の文章…

誤字だと思うんですが…。

以前このブログで、作家でエッセイストの「甘糟幸子」さんのことを、「甘粕幸子」と漢字を間違えて紹介してしまったんですが、その時「甘粕幸子 作家/小説」で多数のアクセスがあったのでびっくり。もしかして一文字違いの別人?思ったのですがどうやらそう…

『くじ』シャーリィ・ジャクスン

『ラヴクラフト全集3』H・Pラヴクラフト 先日「アメリカ幻想文学20」というページを見ていたら、むらむらとシャーリィ・ジャクスンの『くじ』とラヴクラフトの『アウトサイダー』が読みたくなって購入。ちなみ全集の3は写真がなかったので、全集1を借用…

『賭博者』ドストエフスキー

佐藤亜紀の「小説のストラテジー」に感化され(またかよ)、思い立ってドストエフスキーなど読んでみる。実は初読のドストエフスキー。 面白いんだけど読んでいて感情の過剰さに疲れる。これがロシア人のスタンダードなメンタリティをあらわしているのだとし…

2005年:印象に残った本

とは言ったものの、こんな話題だけではあまりにもあれなので。 今年出版されたものの中で(文庫落ちは含まず)、とりあえず現時点で印象に残ったものをつらつらと挙げたいと思います。小説も批評もノンフィクションもマンガも一緒くたで。■国家の罠 佐藤優 …

佐藤亜紀の新刊が

出る夢を見ました。 電車の中吊り広告に大々的に書いてあるのを見て(ありえねえ)、「うそーん!!」と大喜びしたところで目が覚めました。 夢でも嬉しかったな。かなり。 何故か詩の本で、しかも林真理子が寄稿してるって設定は我ながら意味不明でしたが。

二十歳そこそこの若造に

してやられました。いや単にちくま文庫の20周年フェアに乗せられて、ついちくまを2冊も買ってしまったってだけなんですが。この前つむじかぜ食堂の夜を買ったばっかりだってのに。まだ全部は読んでないのでとりあえずラインナップだけ。 ■すぐそこの遠い…

ジョン・バージャー『見るということ』

理論的な側面から写真を捉えるのも面白いです。つってもちゃんと分かっているのかはかなり怪しいですが自分。 ちなみにタイトルは立原道造の『5月の風をゼリーにして』になぞらえたものです。1年を通して10月の光が一番美しいと思うのは私だけですか。

新津保建秀写真集『記憶』

相方が買ってきたのを見せてもらったんですが、一目で好きになりました。 いわゆるアイドルのグラビア写真を主に撮っている人のようですが、この人、季節の光の色をよく知っている写真家だなあと思う。 春の淡い水色がかった光、夏の濃い光、秋の眩い金色の…

『つむじ風食堂の夜』吉田篤弘

何気なくのぞいた書店で見つけた一冊。地味な装丁だけど何となく目を引かれて手に取ったところ、腰帯に『クラフト・エヴィング商會』の文字が。クラフト・エヴィング商會といえば『どこかに○いってしまった○ものたち』で、今はもうない、でも、かつて存在し…

『ラピスラズリ』山尾悠子

大好きな山尾悠子さんの本。冬と人形と冬眠族と聖フランチェスコの話……冬が近づくと、無性にこの美しい装丁の本が読みたくなります。

『ノラや』内田百輭

そういや内田百輭は何故か一番有名な(おそらく)『ノラや』を読んでなかったな、と思い、読みかけの『国家の自縛』や『グールド魚類画帖』をほっぽりだして唐突に読み始める。 百鬼園先生のネコ溺愛日記。かなりのネコ好きを自認しているつもりの私だけど、…

浅暮三文『実験小説 ぬ』光文社文庫

大嫌いな豊粼由美が解説を書いていたため(下品なんだよ、この人)よっぽどやめようかとも思ったけれど、『異形コレクション』が割と面白かったので購入した浅暮三文の短編集。実験小説集である前半部分と、異色掌編集である後半部分とに分かれている。 うー…

菅浩江「夜陰譚」を読む。

……駄目だ、「博物館惑星」を読んだときにも思ったんだけど、この人の小説って滅茶苦茶巧いし、破綻もないし、描写も凝ってるし(やや同種の表現を使いすぎるきらいはあるけど)なんと言っても面白いし文句の付けようがないんだけど……何故か最後の最後で好き…