新津保建秀写真集『記憶』

相方が買ってきたのを見せてもらったんですが、一目で好きになりました。
いわゆるアイドルのグラビア写真を主に撮っている人のようですが、この人、季節の光の色をよく知っている写真家だなあと思う。
春の淡い水色がかった光、夏の濃い光、秋の眩い金色の光、古い記憶みたいに黄ばんだ冬の光……そして、それぞれの季節を体現するかのごとく配置された女の子たち(制服の色彩の選び方がまた秀逸だ)。
『記憶』とあるとおり、この写真を見ていると、かつて(おそらく)男子のティーネイジャーだった誰かが、こんな風に誰か(何か)を見つめていた記憶をトレースしているような気分になってくる。
女の子たちを見つめる視点も、あくまでもクラスメートの男子のそれで統一されている。窓から校庭を覗き込む彼女のうなじの上だったり、制服のスカーフの結び目だったり、ぼんやりと遠くを見ている横顔だったり。
クラスメートの視点だからこそ、これらの写真は彼女たちの内面を写さない。そして決して写真の向こうにいる私たちと目を合わせない。
だからこそ彼女たちには、神秘的な美しさと儚さのソフトフォーカスがかかっている。かつてどこかの少年の目にそのように映ったみたいに。