血―吸血鬼をめぐる8つの物語 

GWは結局おうちで本ばっかり読んでました。うち一冊についてレビュー。
内容はタイトルどおり吸血鬼を題材としたアンソロジー。全体としての感想はうーん…買わなくて良かった。かなりいまひとつ感漂う内容。うちいくつかをピックアップして感想など。

こちらは「超・恋・愛」で既読だったんだけれど、このアンソロジーの中では一番面白いかなあ。目の見えない生き物が感じる世界の描写が大原まり子らしい奔放なイマジネーションで描かれているところがいい。てかこれ吸血鬼の話だったんだ。

うーん……好みの問題なんでしょうが、この人の文章って私は全然艶を感じないんですよね。艶というか凄みというか。やたらもったいぶった感ばかり強くて。だからこの話なんかも終末の退廃した世界観とアイディアは面白いのに、文章がその世界の深みを打ち消している感じがしてなりませんでした。好きな人は好きなんでしょうが、昔から菊地秀行は合いません。

ある耽美な幻想小説作家の記念館を訪れた女が、時間と空間のねじれた世界に入り込む…ってタイトルから内容から皆川博子へのオマージュみたいな作品。
ううん、皆川さんの眩暈がするような文章に慣れ親しんでしまった読者としては、ちょっとこの程度では酔えないかな、という感じ。何か強い酒飲み過ぎてもはや普通の酒ではアルコールと思えなくなったアル中みたいですが。

今回の目当ての作品。佐藤亜紀の短編って初めてだったのです。冒頭のウィーンに着いて、N某氏の話が始まるまでが非常に面白いというか、佐藤亜紀らしい端整で皮肉の利いた文章がとても心地よかった。あとはうーん、思ったより面白くなかった…なあ。やっぱりこの人は長編が向いているのかな、と思いました。
信心深い吸血鬼という設定は妙にユーモラスでした。