『つむじ風食堂の夜』吉田篤弘

何気なくのぞいた書店で見つけた一冊。地味な装丁だけど何となく目を引かれて手に取ったところ、腰帯に『クラフト・エヴィング商會』の文字が。クラフト・エヴィング商會といえば『どこかに○いってしまった○ものたち』で、今はもうない、でも、かつて存在した(かもしれない)不思議な品々のカタログにうっとりと心を酔わせたっけ。
『月光光線銃』に『深夜眼鏡』、『人工虹製造猿』に『流星シラップソーダ』……タイトルを挙げているだけで心躍るどこかにいってしまったものたち。

つむじ風食堂の夜』も、きっとどこかにあったであろう(そして今はもうないかもしれない)、月舟町とそこに住む人達の話。まず食堂(というより由緒正しい洋食屋)のメニューが美味しそうなのが素敵だ。
ここのところ心身共に疲れ切っていてとても本読むような精神状態ではなかったんですが、こののんびりとした懐かしい世界に、荒んでいた心が優しく解きほぐされました。別に癒し系の本ではないんですけどね。


■『どこかに○いってしまった○ものたち』どこかにいってしまったものたち
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