菅浩江「夜陰譚」を読む。

 ……駄目だ、「博物館惑星」を読んだときにも思ったんだけど、この人の小説って滅茶苦茶巧いし、破綻もないし、描写も凝ってるし(やや同種の表現を使いすぎるきらいはあるけど)なんと言っても面白いし文句の付けようがないんだけど……何故か最後の最後で好きになれない――あるいは入り込めない――ものを感じる。
 たぶん自分はこの人の、人間(特に同性)に対する容赦のない視線が苦手なのでしょう。

 もちろん女性の暗い部分を描いた「夜陰譚」と、愛と美にまつわる優しい物語である「博物館惑星」とを同じレベルで語るなよってのは十分分かってるんですが、「博物館惑星」を最後まで読んだときに感じた違和感のようなものを、「夜陰譚」にも同様に感じたので、おそらく私の引っかかりはこの人の作品に共通する部分に対してなのだと思います。

 もしかしたら、これは単に私の心がひねくれているせいなのかもしれない。いや8割くらい本当にそう思っているのです。だってWEBの「博物館〜」に関する書評は、私の見た限りではおおむね(というかほとんど)高評価で、あの世界を最後まで堪能できない自分は人格形成に何か決定的な問題があるような気がしてきてしまうのです(いや私もラスト2話手前くらいまでは心底感動しつつ読んでいたのですよ)。



でもやっぱり小さい声で言ってしまう。
そんなに素敵な女性か? 美和子。正直私は少しも好きになれんかった。