Case Corini Barbera D'asti La Barla 2003

カーゼ・コリーニさんのところのバルベラ・ダスティ2003年。イタリア、ピエモンテでは屈指の自然派ワインだそうで。値段は5000円ちょっと。

抜栓直後は、自然派ワイン独特の(と私が感じている)あの素っ気ない感じの香りがしたんですが、グラスに移すと、すぐに華やかなバニラの香りが広がってきました。味は全体に濃厚。果実味もベリー系とかではなく、カシス系のやや濃ゆい甘さが感じられました。バルベラ種を普段飲まないので、これがバルベラのスタンダードなのかは分かりませんが、とりあえず『洗練』とはかなり遠いところにある味なのは確かです。いや、非常に美味いんですが。

一言で言うと「土臭い味」というのがぴったりくる。ピノ・ノワールの持つソフィスティケーテットされた味わいや、カベルネ種のような、マホガニー製の家具みたいな重厚さがある訳ではない。でも、地に足の着いた、しっかりとした強さが感じられる。例えるなら田舎の純朴な青年みたい。都会的な、技巧に走る感じのアピールじゃなく、あくまで直球勝負というか。やや野暮ったく感じられる甘さも、くすんだ赤の色合いも、「こういうのって別に好みじゃないんだけどな」と思いながらも、その飾らない人柄の現れのようで、何となく好感を持ってしまう、そんな味です。

音楽でいうと難しいのですが、ごく個人的にはミッシャ・マイスキーのチェロがこれに近いかなと思います。

もちろんマイスキーの音は充分洗練されているのだけれども、チェロ独特の暖かみのある音が、このワインの土臭さを彷彿とさせる。
ただ、同じチェロでも決してロストロポーヴィッチではない。ロストロポーヴィッチのような、あの泰然自若とした、大河の流れのような悠々たる感じはこのワインにはない。もっと素直ですり寄ってくる感じの、言ってしまえば、あまりあれこれ考えずに楽しめる類の音楽であり、ワインなのだという気がする。

マイスキーにしろ、このバルベラ・ダスティにしろ、最初に聴いたり飲んだりしたら、まずたいていの人が好きになるタイプでしょう。非常に高いクオリティを持っているのに、来るものを拒まない敷居の低さがある。でも、じゃあ「これが一番好きなの?」と聞かれると、やっぱり求めているのはこれじゃないということに気づいてしまう。ええそうです、私はロストロポーヴィッチのほうが好みです。