yanokami『yanokami』[rakuten:plazahamada:10007531:image:small]

矢野顕子レイ・ハラカミ。どちらも唯一無二の音を生み出すアーティスト。やばいなあ。素敵な音と素敵な音が混じり合ったら、いったいどれだけ素敵な音が生まれてしまうんだろう。そんな期待と、もしかしたら自分の期待はちょっと過剰すぎるんじゃないかという不安に駆られながら聞いた。

とても不思議なアルバムでした。レイ・ハラカミの音は電子音を駆使しながらものすごく有機的で温かいんですよね。まるで水を含んだ画用紙の上に水彩絵の具を落としたときの、ふわっとした色の広がりみたい。音と音、曲と曲の切れ目を感じさせない浮遊感のある音はとても気持ちが良いです。
そして矢野さんの何とも自由なボーカル。イメージとしてはレイ・ハラカミの音が雲で、矢野さんの声は、その間をすいすいと縫うように飛び回る風みたいな感じでした。

個人的に良かったのは『DAVID』と『NIGHT TRAIN HOME』。どっちも一度聞いたことがある曲なのに、アレンジが違うだけでまた違う色合いを見せられました。
UAの『閃光』のときから思っていたけど、レイ・ハラカミの音はボーカルがあった方が好みだ。抽象画のように、あまりに広がりすぎてとらえどころのない音の世界に(それは自分の理解力のせいかもしれないけれど)、ボーカルが輪郭を与えてくれる。もっともUAが手綱のように音を引き絞っていたのに対し、矢野さんの声は、コアを与えながらも、決して縛ることはない――むしろ自由のレンジを広げていた――気がした。どちらが良いとはいえないけれど、個人的には矢野さんのアプローチの方が好み。