2005年邦楽アルバムベスト10

くるり “NIKKI”NIKKI(初回限定盤DVD付)
2005年のベストアルバムを1枚だけ選べといわれたら、迷わずこれを選びます。本当に面白いバンドですね、くるりって。アルバム毎に色々な表情を見せるけど、どれをとってもしっかり“くるり”の音になっているのがすごい。多分岸田繁の声のせいもあるのだろうけど、このアルバムでもストレートなロックを演奏していてもどこか必ずひねっている感じがします。
次はこのバンドがどんな音を聞かせてくれるのか、今から楽しみです。


SINGER SONGER “ばらいろポップ” ばらいろポップ
Coccoが戻ってきました、それもくるり岸田繁と一緒に。一昨年タワレコ限定でリリースされた”SING A SONG” byこっこちゃんとしげるくんからの発展形です。
のびのびと歌うCoccoに安心すると同時に、改めて彼女の歌声の美しさを再認識しました。彼女の声は私に「空」を感じさせます。このアルバムでの彼女は、「晴れ渡った空」です。かつての彼女の作品で聴かれたような「雲が低く垂れ込める空」や「真っ黒な空」「うす曇の空」をまた感じたいと思ってしまうのは、せっかちな私のわがままなのかもしれません。今はただ、彼女がまた歌い始めた、その事実だけで満足したいと思います。

レイ・ハラカミ 〔lust〕Lust
UA矢野顕子とコラボレートしていたレイ・ハラカミの久々の新作です。いわゆるテクノ/エレクトロニカにはとんと疎かった私がこのジャンルを聴くようになったのは、レイ・ハラカミがトラックメイキングしたUAの“閃光”を聴いたからです。そこに聴かれる音は、時間を規律せずただ空間だけを広げているようでした。この4年ぶりのニューアルバムもそんなハラカミワールドが広がります。これを聴くとついつい時間を忘れてしまいます。

半野喜弘 “アンジェラス”Angelus
坂本美雨原田郁子クラムボン)、中納良恵EGO-WRAPPIN’)といった参加面子が好みだったので、ちょっと聴いてみるかという軽い気持ちで買ったのですが、結局今年前半期のヘビーローテーションになりました。
とにかくエレクトロニカと生音の絶妙なバランスが抜群に気持ちいいのです。特にfeat.ハナレグミのtk-02“夢の匂い”が素晴らしかった。半野喜弘のトラックメイキングも抑制が効いていて素晴らしいのですが、なにより永積タカシの声がとても艶っぽくソウルフルで、歌いだしだけで引きずり込まれてしまいました。まさに夜の音楽です。

BOOM BOOM SATELITES “FULL OF ELEVATING PLEASURE”FULL OF ELEVATING PLEASURES
前作がどちらかというと内向的な音をしていたのに対し、3年ぶりのオリジナルアルバムはゴスペルコーラスを大々的にフィーチャーし、彼らとしては結構ポップ度の高いアルバムとなりました。もちろんAPPLESEEDで使われていた2曲も入っていて、テクノ系をあまり聴かない人にも十分アピールできたと思うんだけど、いかがでしょう?
ロックは好きだけどテクノは聴かないという人は一度聴いてみてください。そのストイックさが気に入ると思いますよ。

m-flo “BEAT SPACE NINE”BEAT SPACE NINE
彼らの音造りは、本当に安心して聴けちゃいますね。ここまでくるとM-FLO節とでも呼びたくなります。まるでかつてのPIZZICATO FIVE? 逆に言えば変化が必要なのでしょう、相変わらず多彩な面子をlovesしています(LISAの参加がサプライズでうれしい!)。今回は女性が多いせいか前作に比べればアルバムとしての統一感があります。
でも、なにより現在のM-FLOの良さは素敵な女性ヴォーカルを発掘してくること。YOSHIKAやEMYLIは、これからの個々の活動に期待したいですね。

馬の骨 “馬の骨”馬の骨
人を食ったような名前ですが、キリンジリードボーカルの堀込弟こと泰行のソロプロジェクトです。昨年後半期のへヴィーローテーションでした。キリンジのときよりロック色が強いかな? 私はこれを聴いてTODD RUNDGRENやJ.D.SOUTHERを思い出しました。tk-4“燃え殻”は、とても彼らしい切なく美しく、そして「たるい」佳曲です。ちなみにお兄ちゃんの堀込高樹のソロ作はまだ買っていません。買ったら紹介します。

DEPAPEPE “Let's Go”Let's Go!!!
神戸出身ギターデュオのメジャーデビューアルバムです。って、これに関してはあっちこっちでかかっていたのでご存知の方も多いでしょう。
若さと爽やかさいっぱいの音で、三十路の私などは眩しくて目を(?)開けていられないほどです。あまり若さに当てられると、中川イサト(知らんだろうなあ)とか引っ張り出して聴いちゃったりします。近年、PE’ZやこのDEPAPEPEなど、インストゥルメンタルでも歌心あふれる若い人たちがどんどん出てきて嬉しい限りです。アコギデュオといえばゴンチチしか知らんという方はぜひ聴いてみてください。若さっていいなって思いますよ。

山中千尋 “Outside by the Swing”アウトサイド・バイ・ザ・スウイング
ジャズ好きならご存知の澤野工房からすでに3枚のリーダーアルバムを出している山中千尋の、名門ヴァーヴからのメジャーデビュー作です。一昔前までジャズやクラシックの世界では美人ナントカなどと言われていても、世の中の一般基準で「まあ普通かな」程度の人が多かったのですが、最近は普通に綺麗な人が増えましたね。本作の山中千尋もテレビで拝見したとき「おーっ、美人だ」と思わず口に出してしまったくらい。クラシックギター村治佳織なんか、思わずジャケ買いしてしまうくらいかわいい。ちなみに村治佳織の新作などはインナースリーブがプチ写真集になっていて、びっくりするやらちょっと嬉しいやら。
えーと、山中千尋の話でした。肝心の中身ですが、選曲がバラエティーに富んでいて、どの曲も端正でありながらも強力にスウィングしています。それにオリジナル曲や曲の組み合わせが魅力的。澤野工房からの諸作のほうがよかったなどという意見もあるようですが、メジャーデヴュー作としての完成度は大変高いと思います。
そういえば大西順子はもうカムバックしないのかな?彼女が最初に出てきたときのインパクトは強かったなあ。

菊地成孔 “南米のエリザベス・テーラー南米のエリザベス・テーラー
菊地成孔という人はやや言葉が勝ちすぎているきらいがあり、必ずしも好きになれるタイプのミュージシャンとはいえないのですが、このアルバムは気に入ってしまいました(不覚にも、カヒミ・カリィが参加しているにもかかわらず)。tk-2の“京マチ子の夜”などは咽返るような色気がむんむんしていて、ヨー・ヨー・マの演奏するピアソラなんかよりよっぽど「タンゴ」な気分でした。まあ、ピアソラ自身、タンゴの範疇からはみ出しているような人だから無理もないんだけど。
ところで、カヒミ・カリィってそんなにいいか?