宇仁田ゆみ『酒ラボ』

農学部醸造酒の研究をする学生のほのぼの話。一話一話が短いせいか、キャラの造形を深く掘り下げることもなく、主人公アワモリの片思いもさしたる盛り上がりもないまま終わってしまったので、食い足りないと言えば食い足りないかな。でもこのあっさり感も嫌いじゃないです。
「トリバコハウス」がつまらんかった私としては、あの手の「女性誌向け」話より、こういう全年齢ターゲットののんびりした話の方がはるかにしっくりきます。
個人的には「ほのかちゃん」の造形がいかにも宇仁田らしくて好感が持てます。このマンガにはヒロイン(?)が二人登場するのですが、一人は男勝りで口の悪い「男酒」サエちゃん。もう一人は天然系の可愛い「女酒」ほのかちゃん。サエちゃんキャラは割と見かけますが、ほのかちゃんはなかなかいそうでいない。これが凡百の女性マンガ家だったら、ほのかちゃんを「天然系を装う性悪(小悪魔)キャラ」にして、彼女に振り回されるアワモリと、それを見かねるサエちゃんとの話を掘り下げるとか、逆にほのかちゃんを「単なるおバカな天然キャラ」にするとか、まあそんなよくある味付けをしたんじゃないかなと思うんです。その方がキャラ立つことは立つし。
でも宇仁田はほのかちゃんを「本当にフツーのいい子」として描いた。こういうのってかなり珍しいと思うんですが。こういう「悪意なきフツーの人達」が一生懸命生きていて、それがクサくもなければ鬱陶しくもない。こういうところが宇仁田の真骨頂ではないかと思うのです。