時代は今マンガらしいです

いわゆるカルチャー誌3誌が、かなり近接した時期に相次いでコミックス特集を組んだので、それぞれについてちょっとコメントなど。

■『SIGHT』23号「究極のマンガ200冊!」SIGHT61号 2015年 04 月号 [雑誌]: ロッキング・オン・ジャパン 増刊

「何とか200」という特集は、もともとは後述のSTUDIOVOICEの十八番ですから、これは形の上ではSIGHTのほうが挑発してきた形になるのでしょう。さすがロッキンオン、雑誌造りもロックです。
ともあれ3誌の中では一番まともというか、コンセプトがはっきりしていて読みやすかった。構成は時代を10年単位で区切り、各時代毎に「読むべきマンガ」を対談形式で取り上げる、言ってみれば時代とマンガについて総合的にレビューするというもの。時代の中の「マンガ」(当該マンガも、「マンガ」という文化そのものも)の位置づけが浮き彫りになって、個人的には興味深く読めました。まあそういう読み方を求めている段階で自分はもう若くないんだなーって気もしますが。
特に山本直樹(いい人選だなあ)と藤本由香里(誰?)の80年代マンガ対談はものすごい同時代性を感じました。
相方にまで、「これはお前が日頃言ってることと全く同じじゃねーか」と言われる始末。そうだよなあ、『同人誌世代における高河ゆん論』とか『同人誌ビッグバン』のくだりなんて同人誌に全く興味のない相方に向かって普段私が話していることとかわんないもんなあ。
確かに一部の批評にあるように「マンガそのものの内容の評価や作品論は薄い」というデメリットはあるけれど、そんなの実際に読んだ人が判断すればいいんじゃないかという気がする。
まあでも「マンガ批評」というよりは「マンガ時代史」的な作りであることは確かなので、初心者向けと言うよりはある程度マンガを読み込んだ向けかもしれません。
とはいえ夏目房之助渋谷陽一の60年代マンガ対談なんて、ほとんど知らないマンガばっかりだったのにすごく面白かった。マンガ好きなら一読の価値アリな特集です。


■『STUDIO VOICE』特集「最終コミックリスト200」
STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2005年 06月号

 うーん、言っちゃ悪いけど「ただのマンガのカタログ」。しかも大して役に立たない感じの。ライターによっては感じのいい、というか「おっこいつは読んでみたいな」と思わせるものもあったけれど、大方のライターが口調の偉そうさ(もしくは高飛車さ)の割に内実が伴っていない作品評で、読んでいて食傷。スタジオヴォイスのライターはもっと文章の芸を磨いた方がいいと思います(偉そう)。
 しかも作品のセレクトも「とりあえず話題のものを挙げてみました」という感じでかなり玉石混淆。正直どこから手をつけたらいいか分からない。「リスト200」とか言ったって本当に200冊読む人は決して多くない(というかいるのか?)のだから、もう少し選別眼を持とうよ、などと思ったりしました。
とはいえ3誌の中では一番初心者向けであり、ガイドブック的、であるには違いないです。


■『Girlie』特集「マンガ再生2005」Girlie vol.6
今回ある意味一番迷走っぷりが激しかったのがこの雑誌。何というか、とりあえず大人しく「NANA」と「のだめ」と「安野モヨコ作品」と「岡崎京子作品」だけ(あ、あと「ハチクロ」もか)を挙げて、あとは砂糖をまぶすみたいに適当に安パイな少女マンガを周辺に散らす感じで終わらせておけば良かったんじゃないかと思います。
 上記のような、「王道」系のマンガと、それ以外のマンガの差がありすぎ。一体どういう基準でセレクトしたのかが全く不明。“Girlie”というからには一応10代〜(せいぜい)20代前半の女の子が購読層だと思われるのですが、その世代に『いやはや南友』とか『銭ゲバ』をぶつけてくる意図がわかりません。いや、いわゆるガーリーな世代でなくとも「NANA」や「ハチクロ」を愛読している方々が『やっぱアホーガンだよ!』と言われても混乱するだけだと思うのですが。
まあ、だからって『ラブやん』とか『げんしけん』みたいなマンガをぶつけられても困るんですけれども。いや私は困らないか。



よろく:3誌を読み比べた収穫。
度胸星』とゆーマンガがどうやらものすごく面白いらしいということ。